キャンジャニ∞先生✨ おはなし

キャンジャニ×先生のお話 TWまとめ

16 山田女子の会

76)まだ学校にいるヤス子

ヤス子は焦っていた。

今日はクラ子がマネージャーをしているサッカー部の試合がある日。本当だったら始発で行かないと最初の試合に間に合わないのに、生徒会の雑用で遅れているからだ。

学校に寄ったので、午前の試合は諦めよう、と思った時、大倉先生に呼び止められた。

「良いところに!!ヤス子ちゃんサッカーの応援行くって言ってたよね」

「はい、今から向かうのですが」

「悪いけど、横山先生にこれ届けてくれへん?僕は今日は学校でお留守番だから」
手渡されたのは、携帯電話と、『トーマス』の財布?

「え、これ、横山先生に?」

頼んだよ、と言って大倉先生は行ってしまった。

大倉先生は、本当に素敵だしカッコいい。一見チャラくて、冷めてるようで、実は熱くて、そのくせ本当の自分を見せない。そういうギャップもミステリアスな所も大好きで、ファンになった理由。
反対によこちょ先生は分かりやすい。

すぐムキになるし、周りを見渡しすぎて、自分の事が見えていない。

よこちょ先生は。

 

77)山田が合流

試合会場は電車で一本とはいえ、かなり時間がかかるし心細いので、ヤス子は、ちょうど陸上部の練習が終わったマル子を誘った。

マルコは「私本当は行きたかったんだ〜」

と、喜んでついてきてくれた。

お互い、クラ子を通しての友達ではあったが、深く喋った事はない。

でも何となく通じるものがあって、2人っきりでも全く苦じゃ無い。

ところで大半の荷物は駅のロッカーに預けてきたものの、マル子は凄い荷物だ。

「ねえ、マル子先輩、この荷物って何ですか?」

「やだ!マル子ちゃんで良いわよお。この荷物は耐震双眼鏡よ。」
さらっというマル子に

「サッカー部は強いですもんね、」

と一応返事はした。(そんなスタジアム級の会場でも無く、地方の県営グラウンドの試合だけど?)とヤス子が考えていると、

「ヤダヤダ、サッカー部じゃ無いわよう、これで安田先生をガン見するのよ」

と真面目にマル子が答えた。

「??安田先生も今日来るんですか!?」

「そうなの。今日の彼のスケジュールは朝からサッカー部の試合の応援ね☆」

「わあ〜〜ストーカーですね」

「うふふ、そうなの💕」闇の笑顔で答えるマル子ちゃん。

 

78)電車の中 お姉様登場

「わあ〜〜本当に安田先生のガチのファンなんですね、クラ子からは少し聞いていたけど」

「うふふ。ファンじゃ無いわ、ガチで愛しているのよ」

「そうなんだ〜🤗」
「卒業までに、」マル子は力強く言った「彼の胃袋をつかむ訓練をしているの」

「へええ」
「ヤス君はだんだんと飢えてくるのよ、私の手料理が無いと。週に2回の家庭科部で調理したものは全て彼に与えているわ。2人っきりで食べていると、『これが毎日だったらなあ〜』って思って来るから。そのうち、必ず!」

「へえ〜〜そのうちマル子ちゃん薬でも入れそうですねえ」

「うふふ、いい薬知ってる?」

「ちょっと、わかんないですう〜🤗」
やめて」
急に、イライラした声が間に入った。
「あんた達、こんなに大勢の人の中で、よくそんな話をニコニコとしていられるわね」
ヨコ子が怖い顔をして目の前に立っていた。
「きゃあ〜ヨコ子先輩!どうして?」

「私も応援に行こうと思って。」

「え!いつもの黒塗りの送迎車は!?」

「電車の方が早いじゃない。午前中はお弁当作ってたから。」

 

79)山田に挟まれるヨコ子

とにかくヨコ子は地獄の数時間を乗り切った。ヤス子とマル子の会話はとりとめがなく、ふわふわしていて、噛み合って無いようで、それでいて会話が永遠に続いていく。

「こんな時にムラ子がいてくれたら。どんどん突っ込んでくれるのに」

やっと目的の駅についた。
「そういえば」ヨコ子は言った。

「コーラス部は?」

「はい、いつもの一回戦落ちです」マル子が答えた。

「あんなダラダラの部に、よくクラ子が熱心に行ってるわね、そんなに歌が好きなの?」

「いえ、下ハモばっかで面白くないって言ってます」

「、、?真面目なのね」

「いやあ、そういう訳じゃ無いと思いますけど」とヤス子とマル子は顔を見合わせた。

2人は、それだけで全てを把握した。(つまり、クラ子は渋谷先生に会うためにコーラス部にいる事、ヨコ子先輩とはいえ喋らない方が良い事。をお互い目を見ただけで確認したのだ)
繊細なクラ子をそっと見守るスタンスの2人は、両側からヨコ子先輩の腕を組んで

「さあ行きましょう〜」と駅を出た。

山田女子に挟まれたヨコ子は、

「何?何?」

と言いながらも大人しく付いていく。

 

80)サッカー部試合会場 お昼休み

サッカーの会場は、丁度午前の試合が終わったところだった。会場に入ると、マル子はおもむろに耐震双眼鏡を取り出し、ヤス子もカバンから小さな袋を取り出してぎゅっと握っている。

自分の高校の応援団の方へ行ってみると、横山先生がウロウロ落ち着かずに立っていた。

その姿を見ると、ヤス子は何だか大切な宝物を見つけた様な、誰にも見て欲しく無いような気分になった。

確かに横山先生は白く輝いていたけれど!白飛びしていたけど!深呼吸して気持ちを落ち着けると先生の側へ駆け寄った。

 

村上先生は、

「俺はいつお昼を食べたら良いんや」と駄々をこねる渋谷先生に「いつでも食べたら良いやん」と返事し、ウンザリしている錦子にギャグを言い続けている丸山先生の頭をはたき、ウロウロしている横山先生に、落ち着かんから座れ!と言おうとした。
その時、パッと横山の顔が明るくなった(発光しているのかと思った、村上後日談)

「もう、よこちょ先生〜」

とヤス子がやってきた。

15 あの毛も色気

71)セクスィースローガン

丸山先生は錦子を笑わせようと頑張っていた。

「ハイ先生。朝起きれない彼女をどうやって起こしたら良いですか」

丸山「チュっ、じゅる、じゅるじゅる〜」

渋谷「これや!」

みんな「ひゃ〜〜」悲鳴。

錦子、真顔。
「ズバリ、プロポーズはどんな感じでしたらいいですかっ?」

村上「そりゃ、綺麗な景色が見えるレストランで『また来よな、つぎは夫婦で💜』」

大人だ〜〜全員うっとり。
錦子、目を閉じている(妄想中)
「先生!セクスィーになるためのスローガンを!」

丸山「胸毛も脇毛もあの毛も色気💖」
「ある意味すげー!」「あの毛って‼️」
錦子は現実に引き戻された。


こんな感じ!?で約1時間があっという間に過ぎて

「もう時間やな」と村上先生が言った。
「えええ〜〜もうぉ〜?」と一番駄々をこねている丸山先生。

村上先生は「これがメインイベントちゃうやろ!明日の試合の為のミーティングやるねん」

ダラダラのコーラス部と違い、県内有数の強豪であるサッカー部は、さっと気持ちを切り替えて会議室へ向かった。
錦子もクラ子に「後でね」と手を降った。

 

72)コーラス部

クラ子はもうクタクタで、ロビーでも寝落ち出来るくらいだった。

(きっと顔もブスだわ。早く寝たい)

しかし追い討ちをかけるように、渋谷先生がこう言った。

「うちも形だけやけどミーティングや。部長と副部長、集まって」

ミーティングとは、明日の動きについての確認事項だった。
クラ子は話を聞くフリをして、熱心に渋谷先生を観察した。

(スウェット姿も良いわ。相変わらずセミロングの髪を束ねているけど、夕食前にお風呂上に入ったのね、髪がまだ少し濡れている。ドライヤーはしないんだ。私が乾かしてあげたいなあ。濡れた髪に手を差し入れて、子供みたいにくしゃくしゃにするの、、きっとすばる君の体温を感じる、、鏡越しに見つめられると、手が震えるかもしれない、)

byクラ子。


10分くらいで確認が終わると、3年生の部長が渋谷先生に言った。

「女子高生とお泊りなんて、彼女に怒られませんかぁ?あ、彼女居ますよね?」

甘えた様に尋ねる部長にイライラしながらも(ナイス質問!)と感謝する。

「今はおらへん、変な心配すな」

今はおらへん。
その言葉だけでカレー7杯いけるわ。


73)宿泊施設。3人の先生の部屋。
「あかん、何でや、何で錦子ちゃんは笑わんのや!」丸山先生はちょっとすねていた。
「しんちゃんの時はニコニコ笑ってるのに、何で俺のギャグで笑わんのや」

「訳が分からんからやろ」村上先生が呆れた顔で言った。

「クラ子ちゃんなんて、いつもゲラゲラ笑ってくれるのに」

「あいつはびっくりやなあ」と渋谷先生。「なんか、いつも冷めた様な感じで、すましてんのに、笑うと、、」

「何や?」

「、、オモロイわ」

「すばる!!ひどい!俺にはオモロイなんて言ってくれたこと無いのに!」

丸山先生はよろよろ倒れながら

「錦子!笑かしたるで、必ず!!イエ〜〜イィってやりながらの筋トレ〜〜」

「そういうとこが、錦子の、はまらん所ちゃうん」

 

クラ子と錦子は女子専用宿舎で何とか寝ようとした。クタクタ。でも寝れない。1年間に起きる「ときめきハプニング」を合わせても足りない位、充実?していた。

彼(あと3人)と同じ車内。

さりげない優しさ。

濡れた髪。

(いんもう占いの件は記憶から抹殺されていた)

 

74)次の日

翌朝、朝食を済ませたコーラス部が集まると、サッカー部はすでに大会へ出発していた。もちろん錦子も充血した目をこすりながら、朝早く支度していた。
「まあ、ぼちぼち行こか」眠そうな渋谷先生を筆頭に、すぐ近くのホールへ移動。
眠そうにポヤポヤしているすばる君も素敵💖
クラ子はサッとすばる君を横目で確認して、寝不足分の気力を補った。

結局、コーラス部は予定通り?ワンステージで終了。

みんなでそのまま、サッカー部の試合会場へ応援に向かうことになった。渋谷先生も一緒だったが、帰りは村上先生の車ではなくおじいちゃん先生の車に乗る事になっている。

ま、こりゃ、しょうがない。


会場に着いてみると驚いた。

応援席に、ヤス子と横山先生がいる!?
「もう、よこちょセンセー、いい加減にして下さい!!」

「ごめっ、ほんまごめん🙏」

謝り倒している横山先生と、ニコニコ笑いながら一応(怒ってるの?)ぷりぷりしているヤス子。

きっと高校名物「横山先生の紛失物」ね!

 

75)サッカー部の応援に来た横山先生
横山先生は運動部全体の統括部長でもあり、こうして強豪サッカー部の応援に駆けつけるのも仕事のうちだ。
「またや」

試合会場に着いて、いきなりソワソワした横山先生。

「ケータイあらへん」

「ちょ、どうするん」と呆れ顔の村上先生。

「そうやねんな〜財布もあらへん」

「呪いの歌、歌ってみ」

「アホか」

「ここまでどうやって来たんや」

「生徒の応援団と一緒のバス、でもバスには無いから、」
横山は村上の電話を借りて学校に電話した。「朝、学校に寄った時に携帯を、多分机の上、、はい、はい、良かった、えっつ!ヤス子さんが!はい、よろしくたのんます。」

「あったんか、んでヤス子がどないしたんや」

「今からここに応援しに来るらしい。ちょうど生徒会室におってんて。」

「そんでもって来てもらうんや」

「恥ずいわ」

「いつものことやろ」
日常茶飯事の事なのに、何故か「恥ずい」を繰り返す横山。

何で顔真っ赤やねん!!

14 クラ子がツッコミ

66)助手席の錦子

錦子は村上先生が運転する車の助手席に乗った。ワンボックスカーだし、運転席との距離が近いわけでも無いのだが、先生の体温が感じられるほど意識している。
当の村上先生は、運転しながら丸山先生や渋谷先生とずっとおしゃべりして、クラ子もゲラゲラ笑っている。


ここからは錦子の妄想タイム再び〜
そうね、彼との初めてのデート。車内で2人っきり。村上先生の選んだ音楽は落ち着いていていい感じ。運転中の彼はとっても優しく

「車に酔った?」って聞く。

「大丈夫よ」

「でもしんどそうだよ」

と言って彼は私の手を取る(運転中)

「冷たいな」

彼は私の手をギュッと握って離さない。

海の見える素敵な場所に車を停めると

「今だけは、生徒と先生じゃ無いっ」

とささやいて、握っていた手を優しく引っ張り、私を引き寄せるの。あっ、そして、、、
「ぎゃあははは〜〜いんもううらない〜〜」
そして、、、、
「キャ〜ここで占うのやめて〜」「ぎゃあ」
丸山先生、本当に本当に本当に。本当に💢

 

67)歩く錦子とクラ子

他の生徒の手前、少し離れたところで先生達の車を降りたクラ子と錦子は、すでにぐったりと疲れていた。

「でもね」錦子はクラ子に言った。

「お楽しみはこれからなの」
クラ子はドキドキした。これ以上何があると言うの?

覗きにでもいく気かしら!?

「村上先生が素敵なんだ〜」「えっ?」
何だか分からないが、錦子はきっと村上先生が好きなのね、車の中から思っていたけど。

それから歩いて宿泊施設に行った。

グラウンドや体育館なども付いている公共の施設だ。

錦子はサッカー部へ合流し、クラ子もコーラス部の集合場所になっている部屋に向かう。

1時間前に別れたばかりの渋谷先生(とおじいちゃん先生)が待っていて「遅いで!」という。

明日の大会(本来の目的)に向けての練習が始まった。
練習中すばる君は全然こっちを向いてくれない。

特別扱いされるわけも無いけどね。

まあ、そこが良いんだけどね。
惚れたもんだから仕方ない。

 

68)夕食タイム
夜になった。

お風呂を済ませたサッカー部とコーラス部の生徒達は、大きな食堂で夕飯を取った。

先生は先生達のテーブルだし、錦子はサッカー部の女子が1人なので、クラ子と一緒のテーブルだ。

「ねえ、錦子ちゃんは好きな人いるの?」

可愛い錦子は校内でも有名で、皆んなが興味心身。

「いえ、あの。いるんですけど片想いで、」「やだ、誰なの?」「錦子ちゃんが片想いなんて信じられない」「LINE知ってるの?」

もう質問責めで、錦子はどう答えて良いのか分からない。

「ちょっと、私の錦子をいじめないでよね」

クラ子が間に入った。

渋谷先生のために一大決心して1人で入ったコーラス部だが、今ではクラ子はリーダー格だ。何故か3年生まで頼って来る。

中学校まであまり人と関ってこなかったクラ子は、この高校で変わった。

ヨコ子やムラ子達6人と、すばる君のお陰。

《私は私》自分の居場所を見つけたから。


夕飯が終わる頃、村上先生が立ち上がった。

「始まるわ!」
錦子が興奮してささやいた。

 

69)マルヒナの、、

何なのこれは。クラ子はびっくりした。
サッカー部の合宿では恒例

「村上先生お悩み相談室」が始まったのだ。
「コーラス部の子もおっていいけど」

と村上先生が言った。

「あまり人に言わんとって欲しいねん」

「はーい🙋」

丸山先生が「SNSなんかにあげると、エゴサーチ丸山が取り締まるで〜」と言うと村上先生が

「お前初参加やろ」と突っ込んだ。


なんなの!?本当に裸になるの?
「1人一個やで〜〜」村上先生が言うと
「ハイっ、ハイ」サッカー部員が一斉に手を挙げた。

「ほい、お前」
「センセー、ファ、ファーストキスした後照れている彼女に何を言ったらいいですか?」
「そんなもんお前、何も言わず、おデコごつんこや」

男子「おおおおっつ」女子「ぎゃああぁぁ」

丸山「あの頃思い出すわあ〜」

渋谷「どの頃やねん」

「センセ!夏祭りデートで彼女が浴衣を着てきたらなんて言えばいいですかっ!」

今度は丸山が答えた

「わー何食べるぅ〜フランクフルトぉ?ヘ〜ンタイっ!」

渋谷「お前が変態じゃ」

男女「お、おう、、」(浴衣は?)


70)相談続き

「ハイ、しょ将来、同棲している彼女が出て行こうとした時なんと言えば良いですか?」

村上「お前が出ていくんやったらなあ、俺も出ていくわ」

渋谷「家だれもおれへんやんけ」

男女、ゲラゲラゲラ
「先生、終電で帰るという彼女を引き止めるには?」

丸山「お願いしますう〜って土下座や!、大体土下座で何とかなる」

渋谷「やっばっ」

「おデコ擦り付ける位でね😉」

生徒はどう反応していいのか分からない。質問もどんどん具体的になっていく。

「ハイ、会社に入って残業している部下の女の子に一言!」

村上、かすれた声で「一緒に帰るぞ」

女子「ぎゃ〜〜」男子「これはかっこいいー」
錦子、息も絶え絶え。


クラ子は、めちゃくちゃ笑いながら錦子を見ていた。村上先生の言葉には、ケラケラ笑っている、で、丸山先生になると、急に真顔になる。

あなた、分かり易すぎなのよ!

そんなクラ子に気がついたのか錦子が言った。

「丸山先生のはねえ、意味がよくわかんないのよね」

私だって意味なんか分からんわ!!

13 学校案内とみたらし

61)車内で

クラ子と錦子はそれぞれ妄想を楽しみながらも表面上は軽いおしゃべりを続けていた。

(女って器用だよね)

そのうち、元気をだんだん取り戻していた丸山先生が、前の席の2人とわちゃわちゃ会話をはじめた。実際の高校男子以上にくだらない話をずっとしている。


クラ子は、前々から疑問に思っていた事を聞いてみた。

「先生達って凄く仲が良いですね」

「えっ?俺ら?」

「そもそも、若い先生7人とも関西出身なのは、何かあるんですか?」

生徒全員が疑問に思いつつ誰も聞けなかった事をクラ子はズバリ聞いた。学校の七不思議の1つである。(ちなみにムラ子が関係していた不思議は最近姿を見せない)

錦子はそんなクラ子に一目置いていた。いつも、取り澄ましている感じのクラ子だけど、本質は正直で真っ直ぐな人なんだわ。


「ああ、俺らJ理事長に集められてん」
さらっと村上先生が答えた。

「なんかオーディションみたいなことさせられてな」
元々別の高校教師だった7人は「新設する学校」に来ないかとJに誘われたのだ。

 

62)ざっくりと学校案内

そもそも、学校法人J学園は系列の学校が沢山あって、日本一の規模を誇るARASI学院や、jrエレメンタリー、名門kinki大学(漢字表記NG)など、幼稚園から大学までの一大グループ学園だ。

その中でウチの高校は特に「自由な校風」が特色。確かに下校時間も早いし、校内恋愛だって認めれていない(はず)けど、おしゃれも自由だし、制服に関しても式典以外ではうるさく無い。

特に個性を大切にしているので、例え学力が低い生徒でも様々なジャンルの才能を持った生徒が多く、開放的でとにかく明るい。

が、ガチャガチャしているように見えて、全体のレベルはかなり高い。
そんな学校を支えているのが、この若手の7人であり、一見「気さくなにいちゃん」に見えるのに、実はかなりスキルが高いのはこの学校を象徴している。

バラバラに集まった7人に音楽好きが多いこともあり、慣れない土地でバンド活動を通して結束を固めてきた。

まあ、最初は趣味程度だったのに、今じゃ軽くスカウトまで来るようになり、それはそれで困ったことになっているし、生徒に知られるわけにはいかないが。

 

63)錦子の危機

「じゃあ、J理事長が《ちょっと》個性的な学校を作ろうとして、先生達が集められたんですね」クラ子が言った。

「まあ、そう言うこっちゃ!」と村上が答え、

「なあ、そんなに俺ら関西弁強いか?」とクラ子に聞いてきた。

「いや〜村上さんがコテコテ過ぎるって!!若者は使わへんような濃い大阪弁使いすぎやって」と渋谷先生が笑う。

「そうやでしんちゃんの大阪弁はちょっと違うで、俺は京都やけどね」

「おい、まる、生徒の前で『しんちゃんは』無いって!恥ずいわあ」

鬼の村上とも呼ばれ、若手の先生の中でもしっかりしていると思われがちな先生の『きゃっきゃ』している姿にクラ子でさえ(可愛い)と思ってしまった。

錦子は表面上、クスクス可愛く笑っていたが、だんだん妄想が爆発しそうになっていた。

(そろそろアオハルどころのシュチュエーションじゃ無くなってきた)


「さあ、高速に乗るで」

「しんちゃん、ちょっとまって!」丸山先生が言った。

「何や?」

「うん、錦子ちゃんがなんか具合が悪そうで」

!?うぎゃ〜

 

64)カーシックではなく

「錦子大丈夫か!?」

錦子は「大丈夫です、気にしないでください!」と言ったが、本当は妄想が過ぎて1人でアワアワしていただけなのだ。

しかも普通なら誰も気づかない位の動きなのに丸山先生はどうして分かったの?しかもクラ子を挟んでいるのに。

「カーシックちゅうやつやな」と心配そう言った村上に「俺と席変わろうか?」と渋谷先生。

錦子は軽いパニックだ。なんて言うことを言うの!?私が村上先生の隣に座るの?そりゃ、部活なんかでは横に座った事あるわよ!でも、車は特別なのよ、彼女の席なのよ。彼女!

錦子は鼻血が出そうになりながら、必死に「大丈夫ですから」と抵抗していたが、

丸山に「ここは大人の言うこと聞いといて」と押し切られてしまった。

一方、クラ子はクラ子で、じゃあ、すばる君はどこに座るの!?と1人ドキドキしていた。

すがるような感じで「渋谷先生は運転されないんですか?」と錦子が聞いたが

「おれはネコバスしか運転出来ないから」と、かわされてしまった(なにそれ可愛い💚)。

 

65)丸山先生のみたらし

結局、運転村上、助手席錦子、その後ろにクラ子、真ん中に丸山、運転席の後ろに渋谷が座った。

錦子が「皆さんがおしゃべりしている方が気がまぎれる」と言うので、遠慮なしに先生達が喋っている。


《すばる君が隣じゃなくって、本当に良かった》クラ子は思った。

近すぎると息が出来ないから!!呼吸出来ないから!
多分、すばる君はまだ、私が丸山先生のファンだと思い込んでいる。

だから、さりげなく丸山先生を私の隣に座られせたし(実際は、もっと奥詰めろや〜って無理矢理追いやってたけど)、かと言って皆んなの前であおるような事はしない。

じっくり観察する事は出来なくなったけど、何気ない彼の人柄を知るたびに、前よりももっと好きになっていく。

とはいえ、ずっと隣の丸山先生が、すばる君を襲ったり?村上先生に突っ込まれたり、急にギャグを言ってくるのでクラ子の感情も忙しい。
挙句の果てに

「しんちゃん、サービスエリア絶対寄って!」と、ごね出した。

「何でや、寄らんとスッと行こうぜ」

「トイレか?!」

「お土産買わなあかんねん、みたらし」

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12 先生とドライブ

56)コーラス部2
部員の1人が

「はい、先生は誰が付いて来るんですか?」と渋谷先生に聞いた。

良い質問だわ、とクラ子は大きく頷いた。

「何で話が出たかと言うと、同じ日に、近くでサッカー部も試合があるやん。サッカー部が前日から合宿するから、コーラス部も共同で泊まったら宿泊費、団体割引きがきくっていう話やねん。だから村上と」「キャ〜♡」

「丸山と」「うそ〜♡」

「おじいちゃん先生2人と、俺」「!!」

クラ子は小さく手を叩いた数人を見逃さなかった。みんなちっちゃくて可愛い子ばかりね。

「えーと錦戸先生は?」

「あいつはまだ顧問ちゃうやろ」

「じゃあ何で丸山先生は?」

「知らん、なんかサッカー部に付いていくそうや」

そして、ちらっとクラ子を見た。

「良かったな」と半笑いで小さく言ってきた。

いいけど。とクラ子は思った。

今のままの方が気楽だわ。私の気持ちを知ったら、この人絶対に逃げ腰になるわ。
コーラスの練習そっちのけで、部屋割りや持ち物の相談を始める部員達を横目で見ながら、渋谷は更に小さな声で、こう言った。

「基本、部員達は現地集合やけど、俺たちと一緒の車に乗って行くか?クラ子」

死んじゃうって!!

 

57)鬼教官村上

「あかんあかん行き過ぎぃ〜!逆や逆!逆や言うとんねーん!」

車内で村上先生の熱血指導が入っている。運転席の丸山先生は、オロオロしながら一生懸命ハンドルを握っていた。同じ車の後ろの席では、爆笑している渋谷先生と、澄ましているクラ子が乗っていた。
どうしてクラ子が先生の車に乗っているか。

それはサッカー部マネージャーの錦子が理由だ。彼女が部員からチヤホヤされる事で他のマネージャーが全員辞めてしまい、ことさら村上から大切にされている。

合宿の送り迎えも、女子1人だし、クラ子と一緒なら送迎しても良いだろうという配慮だ。

(部員達から守る為でもある)
そして今は、最後に拾う錦子の家までの道中。

ペーパードライバーの丸山を見かねた村上が運転を指導している。車内に響く村上の声と、ビビりすぎて反対の事をやっちゃう丸山と、爆笑し続ける渋谷。

実はゲラのクラ子も、もうそろそろ限界が来ていた。渋谷先生の前で?いや、醜態は見せたく無い、と思った瞬間、

プスん

と間抜けな音がして車がエンストして止まった。

何も無い農道で。

「あ〜はっはっ、やばいってゲラゲラ」

クラ子は全開で笑っていた。

 

58)戸惑いの錦子
錦子は家の前で、村上先生(とあと3人)がお迎えに来るのをずっと待っていた。

村上先生(とあと大勢)とお泊りするなんて。

昨日はワクワクして寝れなかったぴょん!
あれは何?遠くの方から、縦にガタガタ揺れている車がぎこちなく近ずいてきた。運転席には憔悴しきった丸山先生と後部座席でゲラゲラ笑い転げている渋谷先生とクラ子!?

村上先生は?と思った瞬間、車の横から急に村上が出てきて

ストォップッ!」

とボンネットを手で抑えて言った。

丸山はびっくりしてまたもやエンストで車を止め、

「手、手で車を止めたぁ!!」後ろの席の2人は又ゲラゲラ笑いだした。

「カオス。」錦子は思った。


「クラ子、お前本当にオモロイわ、なんでいつも澄ました顔してんねん、笑った顔めっちゃ良いわ」

素を出し過ぎたっと思っていたクラ子は渋谷先生の言葉にときめいた。
「そんで、屁でも出されたら惚れてまうわ」

またこの人は!

私をキュン死にさせようとしているわね!

 

59)すばる君は薫ちゃん似

錦子を乗せてからは村上が運転した。

さっきと同じ車だとは思えないほどスムーズにマニュアル車を運転している。村上が「色々考えて」決めた席は助手席に渋谷、運転席の後ろに錦子、真ん中にクラ子、その横には憔悴しきっている丸山が座っている。

この車はワンボックスカーで、後方の荷台にはサッカー用具がぎっしり積まれていた。
目的地はかなり辺鄙なところとは言え、乗り換え無しの電車一本で行く事が出来る。

だから、他の生徒はかなりの時間がかかるものの現地集合で大丈夫なのだ。
クラ子は錦子と軽く喋りつつ、前の席に座っている渋谷先生の横顔を眺めていた。

村上先生と楽しそうに喋っている。こんな近くで彼を観察出来る時が来るなんて。、、すばる君はいつも髪を縛っているけどあれは天然パーマよね。髪をほどくとどんな感じになるのかな。ERの薫ちゃんくらいかな、髭は無いけど。きっと、濡れた髪は色気ハンパないだろうな、もしかして、今日、見れちゃう!?ゴクリ。キャ〜キャ〜!!!

妄想にふけっていたクラ子と、そして錦子でした✨

 

60)もうcan't stop 錦子

錦子は、村上先生(とあと3人)と一緒の車に乗っている事がまだ信じられない。

とにかく妄想が止まらない。

先生の後部座席なので後ろ姿しか見えないけど、エロさが溢れ出ているからこれでOK。これ以上近ずくと無理、死ぬ。学校だとカッチりまとめている髪も、ちょっとボサボサで『休日感』半端ないわ。いつもスーツかジャージ姿だけど、シンプルな白いTシャツがよく似合っている。どこのブランドかしら。とにかくスタイルがいいのよ、良すぎるのよ。迷彩の短パンはパンピーだとイラつくけど彼が着ると「正解!」しか無い。足がスラリと長いから。まあ、私が彼女だったらぴったりのジーンズを合わせてあげる、いや〜ベストジーニストなんかになっちゃう、だってお尻が良いから!プリっと上がったお尻を見て〜いや誰も見ないで!!それから、あの目!フロントミラー越しにチラッと見える彼の目はトイプーみたいで愛おしい。いやッ誘拐されちゃう、でも1番興奮するのは指ね。あのゴツゴツしていながら長い美しい指で、私の髪を触られたらきっと、、
錦子の妄想が止まらない。

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11 関西弁禁止令

51)職員室

渋谷先生は(仕返しじゃ〜〜)と1人ご満悦だった。職員室に帰っても思い出してニタニタしていた。

「ご機嫌ですね」錦戸先生が声をかけてきた。

「何かあったんですか?」

「それが、ぷっ。クラ子が、」

「ク、クラ子が?」

「望遠鏡で丸山をガン見してきたから、俺、丸山の前に立って視界を遮ってやってん。ほんでわざとウィンクしたった!ぷ、盗み見バレバレやって。あのクラ子の慌てよう😜」

、、錦戸は、そりゃあ慌てるよね、と思った。

『見ているだけで幸せ』の渋谷から《ウィンク》だって。

「いつも俺をバカにしてくる仕返しじゃ〜〜」

渋谷は満足そうにしている。

錦戸は『本当は丸山じゃないけど、、、別にいっか。』とつぶやいた。

「いっかってイカ!?

びくびくッ。錦戸の前に、いつのまにかすば子が佇んでいた。

「すば子ちゃん〜」

「だって、イカって🦑言った」

「すば子ちゃんは楽しいね。」錦戸はニッコリ笑って「でも職員室はイカ禁止令が出てたよね?」

「イカす〜」

とすば子が言い終えるまでに、ムラ子が凄い勢いで職員室に入って来て

「管理不足で申し訳ございません」

と言ってまた凄い勢いですば子を引っ張って行った。

 

52)ムラ子とすば子

「あんたね、いつも錦戸先生を困らせるのいい加減にしなきゃ」

ムラ子はすば子に本気で怒っている。

「あんたが錦戸先生にイカばっかり渡すから、わざわざ職員室でイカ禁止令まで出たのよ」

「だって、夢のイカの人だもの」

っふう、黙っていれば真っ赤な🌹の様な美少女で、何故か頭もいい、歌だって一度でも聞いた人は脳天やられる。

羨ましいくらいのスペックを持っているのに。
とにかくムラ子は心配なのだ。私やヨコ子達がそばに居ないと危なっかしくてしょうがない。真っ直ぐでウソがつけなくて、すぐ人に誤解されるすば子。何にも悪い事なんかしていないのに反省文を書かされた事だってある。

「分かっているよ、ムラ子」

すば子は真面目に言った。

「みんなの為に、もっと協調性を、」

「ちがーう!」ムラ子は吠えた。

「個性的なのは良いのよ。あんたはあんた。ただ、すば子が人に誤解されるのが嫌なだけ!」

「ありがと」すば子は言った。

「嬉しいから、お礼。大倉先生はイカす男よ」

「は?オークラセンセー?」??何がお礼なのか訳がわからん。

『ムラ子にイカれてる』

 

53)エイトのミーティング

「それはそうと」ライブに向けてのミーティングで、錦戸先生が言った。

「顔は分からん様にするにしても、MCの時、関西弁だとアウトちゃう?」

いつもの狭いライブハウスとは違い、今回は会場が広い。他の人気バンドも出るからお客の層も広くなる。当然、生徒が来る可能性も高くなるわけで(一応は禁止されている)

「うん、ここ関西ちゃうし、悪目立ちするなあ?」

「今まで結構決まったお客さんばっかりやったし」

「逆に関西からのゲストって設定にしたら?」

「一緒にやってきたバンドも出るし今更無理やろ」

「いっそ、しゃべらんかったらいいやん」

「でも横山君と村上君のMCが1つの売りみたいなとこあるやん!?」

確かに、地味に始めたバンドが、大きなオファーを貰えるまでに成長したのは演奏や歌のクオリティはもちろんだがMCの面白さも一因だ(カリスマ性とか爆イケとかもあるけど、本人達は気づいていない)

「じゃあ、村上君と横山君、練習しましょう。今から関西弁禁止」

錦戸先生がきっぱり言う

「関西弁喋ったら罰があります」

村上と横山は、そんな錦戸に本気でびびった。

 

54)関西弁禁止
村上は気合いを入れてタオルを頭に巻いている。

「受けてたつで〜」ここは比較的標準語が喋れる錦戸が仕切っている。

「村上君、ただ標準語を使えば良いだけやから」

「ええで、いつ始めてもええで」

「横山君も大丈夫です?」

横山もコクコク頷いている。

「じゃ、スタートです。いつも通りMCからメンバー紹介の流れでどうぞ」

「.....」「......」

「しゃべらんのかいっ」と渋谷が突っ込むと、すかさず錦戸が、

「言っときますけど、すばる君もみんなも関西弁禁止だからね。みんなに罰あります」
「.....」

「....」

「...」

「何か。だんまりを決め込んだね」

「でも、しゃべらないのも違うでしょ」

「これあかんやろ」何気に横山が呟いた瞬間、謎のスプーンを持って錦戸登場。横山の口に何かを入れた。

「ぷうー!!」横山は緑の毒ガスを吐く。

「嫌だわ〜」

「どうしてこんなことになったのぉ〜」

「おねいやん、もう」さらに横山に謎のスプーン追加。

「負の連鎖!!」

「??プハー!!」

「横山君が悪いんでしょ」

「全然出来ないよね」

「俺ばっかりなん💢?」

横山は3回目の毒ガスを吐いた。

 
55)コーラス部
クラ子はドキドキだった。あのウィンク事変から、初めて渋谷先生に会うから。

あれは何だったの?意味はあるの?私って分かっていた?DVDの発売はあるの?

とても混乱していた。

居ても立っても居られないクラ子はトイレに行こうとした所で渋谷先生に会った。

なんとニコニコ笑いかけてくる渋谷を見て『私、死ぬの?』溶けそうなクラ子(あくまでも無表情を保っている)だったが、渋谷はこう言った。

「残念でした〜」は!?

「丸山をガン見してたのバレバレです〜」

「...」

「丸山は鈍感やけど、俺の目は誤魔化されへんぞ♡」
そうですか。やっぱりね。この人全然わかって無いのね。すばる君の方が鈍感なんだけど。

 

クラ子の気持ちに全然気付かない渋谷先生は、音楽室に入るなり部員にこう言った。

「コーラス部の今度の大会はかなり辺鄙なとこやから、前日から前乗りしよかって話が出てるんやけど、みんなの意見聞かせてくれ」
スッと、ムラ子ばりに手を挙げたクラ子は、一言「賛成です」と言った。
すばる君、顧問だから来るよね!

お泊りなんだよね!

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⑩クラ子も野鳥の会

46)生徒会室
「結局」

とムラ子は言った。

「いい男だわね、あの先生達は」

部屋にいるのは総会に出席していた生徒会役員の4人だけ。

「まあ大人だよね(2人は)」

「反対意見も筋が通っていた」

「とにかく生徒の安全が大事ってね」

良い試合を終えたスポーツ選手の様に清々しい表情のムラ子は、クルクル回りながら更に言った。

「女史に認めてもらえれば、結婚も出来るのかしらぁ?」
「え。」

と年下組がびっくりしていると

「大丈夫よ」とヨコ子が笑いながら言った。
「いつもの妄想癖でしょ?現実も分かっているはずよ」

「理解し合っているんですね」

「私達3人は」と遠くを見るような目でヨコ子が続ける「ずっと一緒に戦って来たから」
3人ってムラ子先輩とヨコ子先輩と、すば子先輩?あの謎に包まれた先輩もこの2人の中にいると居心地がいいんだろう。てか、何と闘って来たの!?

「そういえば」

急にムラ子が言う。
「エイトのライブが、近くなって来たわね」

 

47)放課後の音楽室
エイト全員で音を合わせる前に

「そういえば、今日の生徒会役員総会でお前達は何をしていた?」

思い出したように村上先生が丸山先生と安田先生に聞いた。
「ええ〜ちゃんと聞いてたけどなあ〜」

「そうやで。」

「まあ、マルは何か甘えて来たけどな〜」

「そっそれは、2人だけのアレやんか〜」

「お前ら小学生か?ありえへんっ」と村上は言いながらキーボードの前に座った。

バンドの時は真剣だ。職員会議では進行役の村上や出世頭である横山も、バンドに関してはあまり意見を言わない。

ここでの中心は渋谷と錦戸であり、大倉は皆と違う角度から意見を出すし、安田も技術的な面でかなり信頼されている。 丸山はここに来てベースの実力をガンガンに上げてきた。

「この曲はいいかもしれんな」

渋谷が呟くと

「ライブのセトリですよね、やっぱ数やってる曲の方が安心しますよね」

と錦戸が応える。
職員室では、おじいちゃん先生にさえ人見知りをしていた2人は、音楽に関しては無敵になる。

 

48)練習後
「でも、今日の議題はヤバかったんちゃう?」と丸山先生が言った。

「たとえ1時間でも、俺ら音楽室で練習する時間が減るやん」
「まあ、それもそうやけど」

と横山先生が言った。

「でも本当に、安心出来る時間に早く帰って欲しいのも事実やねん」

「でもさ、オークラも、普段はここでしかドラムの練習出来へんのも事実やん」

「まあ、ドラムは出来へんよなあ」

「そんなん言うんやったら、もっと俺らに加勢してくれても良かったやんけ!!」と村上が山田に向かって言った。

「俺らの終わらん問答に、クラ子がどんなに冷めた目で見て来たと思ってんねん」

(冷めた目で、?)さっさと帰ろうとしていた錦戸先生は思わず足を止めた(どんなに綺麗やったやろう)とちょっとうっとりした。

「クラ子!!あいつ俺に『ちっちゃ』ってすぐ言うねんで!?ヤスどう思う!?」

渋谷が急に怒り出す💢。

(俺も言われたい!)⇦💛。

安田がニコニコしながら

「それはアカンなあ〜なめられてるなあ😊」

と言うと、村上がかすれた声で

「あいつに大人の男、教えたろか?」

と笑った。

 

49)クラ子とやすばの話
渋谷先生と安田先生が並んで歩いていると、ある人達は一斉に口を押さえる。口から漏れる「ひいいい〜〜」という言葉が漏れないようにするためだ。

「可愛い💕」という一派に対し、「尊い( ;∀;)」と言って拝みそうになる一派もいる。

だって本当に尊いんだもの。

クラ子は、最初にあの2人を見た時、息が止まりそうになった。多少、後ろめたいこともやってきた⭐️クラ子だが、男性を好きになったこともなく、ましてや自分から興味を持つなんて考えられてなかった。

一目みて、

「可愛い、保存したい、持って帰りたい」

と思ったクラ子だったが、2人の関係性を知るたびに「尊さ」が分かるようになり、今じゃ渋谷先生以外目に入らない。

安田先生ももちろん大好きなんだけど、入学式から一緒のまる子が彼をロックオンしているので最初から選択肢は無い。

とはいうものの、渋谷先生に会えば嫌味を言っちゃうし、我ながら全然可愛くない。

「小学生かっ」

まっそりゃしょうがない。

初恋だから仕方ない。

 

50)クラ子も野鳥の会
今日もお昼休みに野鳥の会をしていたまる子は

「大変!大変!」

とクラ子を呼んだ。

「山田が出た!!」

「山田は昨日でお腹いっぱいだから当分いいわ」

「昨日って?」

「生徒会役員総会」

昨日の話を気だるそうに、でも詳しく話すクラ子とハンカチをギリギリと噛みしめるまる子。

「そんな素敵な山田チャンスがあったなんて。私が出席したかった!」

「まあ、ヨコ子会長からの指名だったから」

「私も書記なのに〜〜きい〜」

「あんた、怒るとさらにブスになるわよ」「!!!💢」

「それにしても、珍しく山田が真剣に話しているわね、望遠鏡よこしなさい」

まる子から奪った望遠鏡で、隣の棟の美術室を覗いたクラ子(再度、裸眼でも結構見える距離だ)
ん、なんだろう、奥にもう1人いる、、

『すばる君だ!!』

いけない、思わず声に出しそうになった。これって耐震よね、性能いいわ、汗まで見える、毛穴だってみえるかも、、、んん!?
クラ子は心臓が止まりそうになった。渋谷先生が、望遠鏡のガラスの中で、ハッキリこちらを向いて ウィンクしてきた!!

 

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