キャンジャニ∞先生✨ おはなし

キャンジャニ×先生のお話 TWまとめ

⑨試合の行方とありえへん山田

41)議題「完全帰宅時間を一時間遅くする」
傍聴席にいる各部長達は、まるでテニスの試合を見ているようだと思った。
「だから、遠方から通う生徒もいる訳で!」
「遠い人は先に帰ればいいんです」
「部活動によっては、ちょっとした練習が凄い差になるし、後片付けは残りの子がするんやで、」
「そういう細かい事は、各部で決めれば良いじゃないですか?小学生じゃないんですよ」
「それだけじゃ無くて、この高校は繁華街に近いからちょっとでも危険を避けたいのもある」
各部長は右、左、右、左と首を動かし、試合の行方、いや、討論の行方を追っている。

発言が途切れる事はない。ほとんどの発言は横山先生と村上先生🆚ヨコ子とムラ子だ。

たまに話題がそれると、くら子が軌道修正する。
ヨコ子は各部にアンケートを実施し、細かい聴き取りなどして膨大な資料を準備していた。ムラ子が言葉巧みに口撃すると、村上先生が切り返してくる。ヨコ子がそっとムラ子に耳打ちすると、ムラ子が新たに仕掛けてくる。たまに横山先生もボソっと核心を突いた事を言うので油断が出来ない。

議事録を取るやす子は「盾と矛」とつぶやいた。

42)Jとムラ子
観客達、いや各部長達は、どちらの応援も出来ずに首だけを左右に振っている。

そもそも、生徒会からの議題は自分達が出した要望なのだ。しかし出席した先生達はみんな人気が高く、生徒会の応援もやりにくい。

とにかく、村上先生&横山先生🆚ムラ子&ヨコ子の熱いバトルは終わりを見せない、、、

かと誰もが思ったその時、オヤジキラーの異名を持つムラ子が作戦を変えた。
「J理事長センセはどう思われますぅ?」

いきなり進行役のJ理事長に話を振ったのだ。

実はムラ子とJ理事長は仲がいい。

全員が息を飲んで見守る中、

「私ですか」

J理事長は、ニコニコしながら言った。

「私は学園の運営に関しては一切口を出さないと決めているんだよ」

「客観的な意見が欲しいだけなんです♡」

とムラ子。

「例えばなんだけど」

J理事長は、ゆっくり言った。

「もう少し頑張りたい部は、個別に申請を出す様にしたらどうかな?付近の商業店舗には、商工会議所や自治体を通して、私の方から気をつけるよう話を通しておくが」

「わあ〜さすがJね」と言うムラ子。

Jは「あなたも、ご活躍で」と笑った。

 

43)大山田
ところで、山田の2人は呑気なものだ。
出されたお茶🍵をすすって

「これA高級品か、B安物か?」

「うーん、A!」

なんてゲームをしている(もちろん、村上先生からは死角になっている)
「私は何を見せられているの?」

とクラ子は思った。熱い闘いが繰り広げられている横で、目の前ではキャッキャと漫才をしてる。
あの2人の周りだけ、時空が歪んでいる。

 

理事長センセからの『間を取る』案は、特に素晴らしいものでは無い。でも前しか見えないあの4人には考えもしなかった様で、一応の納得はしていた。

「あと2つも議題があるんだけどなあ、ああ部活行きたい」

と、クラ子が横目で👀やす子を見ると、ノールックで議事録を取りつつ目線は横山先生の方を向いている。?確か担任よね、やす子の。

「あなた、大倉担じゃなかったっけ?」

「そう、大倉先生のファンよ」

「やけに横山先生を見てるから」

「!よこちょは担任で。いつもポヤポヤしてて。あの、真面目な討論もするんだなあって思って」

ドキドキしながら答えた。

 

44)総会終了
後の議題は、予想外に早く決着がついた。

寄り道に関しても、学校に申請するならある程度OK。
しかし何故か、校内恋愛禁止に関してはJがかたくなに否定した。

「もちろん、禁止なんてしていないんだよ。ただね?学校は勉学が一番だろう。身も心も、ああこの人同士ならって認められると了解が出るんだ。」

「よく意味がわからないんですけど?だいたい誰が了解を出すのですか?」

「うちの姉。」

巨大学校法人J学園大株主のM女史だ。

ああ。

これで議論は打ち切り。会は閉幕した。

 

会議の後、村上先生がヨコ子達にズンズン近ずいて来た。何か言われる!?怒られる?、生徒会の4人が身構えていると

「イエ〜イ」

と両手を上げてハイタッチを求めてきた!

「いい闘いやったな!ノーサイドや。健闘を讃えようぜ」

ムラ子はキャッ〜とはしゃぎながら村上先生とハイタッチをすると👀

「横山先生もっ」と勇気を振り絞って言った。

横山先生は「おっしゃ!」

と言いながら喜んでハイタッチをしてくれた♡キャッ、この手もう洗わないんだ〜。

 

45)きちゅのハイタッチ
ムラ子が先生夫婦⇦?とハイタッチをすると、何故か(何もしていなかった)山田の2人まで横に並び始め、先生と生徒会役員がみんな順番にハイタッチをする流れになった。

丸山先生は「イエ〜イイ、ブンブンブン!」

と言いながらヨコ子とハイタッチをして

「えらい活躍やったなあ、惚れてまうやろ〜」とギャグ?を言う。ヨコ子はどう反応するのが正解なのか考えていると

「やっば、先生会議で何にもしていないのに〜あっははは」

とクラ子がお腹を抱えて笑っていた。そういえば、あの子意外とゲラだったわね。びっくりだけど。そして丸山先生も満足そうにしている。これが正解なのね!?レベルが高いわ。

やす子と横山先生は、軽く小さくハイタッチした。

「ちゃんと議事録取れた?」

「バトルの所は聞き取れなくて。だから録音したのを書き起こします」

「え、あの討論もっかい聞かれんの?何か恥ずいわ」

と横山先生は微笑んだ。

(私は大倉担)やす子は呪文を唱えた。

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⑧野鳥の会のまる子

36)くら子
(いつも冷静な私が、感情をぶちまけてしまった)

くら子も又、感情がグチャグチャだった。

(しかも、錦戸先生に。私が壁に押しやった時、仔犬の様におびえていたわ。でもね、身長のことを持ち出すのはNGでしょう!?)
渋谷先生と両想いなんてありえないのは分かっている。

「絶対」くら子は声に出した。「叶わない。」

今からどんな奇跡が起ころうと、私の身長は縮まないし、ましてや渋谷先生が成長する事も無い、いや、待てよ。

「あの人、時々5歳児じゃない?」ふふふっ。

いや、あの人、疲れると、初老になる時もある。ふふ。

ああ〜今多分顔がブスだから会いたくない、けど、どうしても足はコーラス部に向かう。


カラカラと扉を開けると、いたわ。彼が。
「錦戸先生とミーティングは終わったんか?」と渋谷先生が聞いてきた。

「えええ〜りょうちゃん先生とぉ!?何話してたの!」と数名の部員が色めき立った。

そうか、そう言えば相談って言ってたなあ。本当にごめんなさい、錦戸先生。心で謝りつつ、渋谷先生の姿を直視する。

はあぁ〜「ちっちゃ」

 

37)次の日 2年 教室
今日もマル子が双眼鏡で安田先生をのぞいている。「ちょっと、」クラ子が声をかけると「今、忙しいんだから、待っててクラ子」
この窓からはちょうど隣の専門科棟の美術室が良く見える。はっきり言って、裸眼でもそれなりに見える距離だ。
「いやん。今日のお肌、荒れているわ。あ、又あの一年が近づいて!!ヤスくん逃げて〜!

「あのさ」

「あーん、行っちゃった。何?くら子」

「、、安田先生ってさ、」

「可愛いよね〜💕」

「いやいや、確かに可愛いけどさ、あんたより、その、小さいじゃん?」

「そこが又可愛いのね〜💕」

「気にならない?」

「何で?」

「だって」マル子は珍しく、マジトーンで言った。「それはヤスくんの個性だし、身長を好きになった訳じゃないし、私は全然気にしない」と言ってから、「きゃっ好きって言っちゃった?💕」と一人で照れている。

「、、ふん、ブスのくせに」

「ブスって何よ〜〜きいい〜」

「きしょい、寄らないで」と言いつつ、クラ子はマル子と離れない。気持ちが前向きになった、ありがとう。

 

38)村上主任とほほえみ
会議室で、村上主任から長いお説教を受けているのは丸山先生と錦戸先生。二人ともシュンとして村上の話を聞いている。
「それで、そもそもの原因は何やねん」
二人とも黙ってうなだれている。

「言えん事か?」

「はい、どうしても言えない事です」
村上主任の目を真っ直ぐ見て錦戸先生は言った。

ため息をつきながら

「そうか、わかった。今後は場所を考えろ、いいな」村上主任は、組んでいたスラリと長い脚をほどき、部屋を出て行こうとした。

「あっ待って、信ちゃん!!」と丸山。

「アホバカボケカス」とぽこぽこ丸山を叩きながら「学校で信ちゃんは無いっ」と村上。

「聞きたいことがあるねん」と丸山。
錦戸は丸山の肩をポンと叩いてから「失礼しました」と行って出て行った。
「錦子ちゃんってさあ〜」

「サッカー部のマネージャーの?」

「そうそう、一年のお澄ましさん」「お澄まし?えっ、あの子ようケラケラ笑うけどな」「よう笑う⁉️」

「あの、サッカー部の合宿の時なんか、」「サッカー部の、がっ合宿⁉️」

「何やねん、お前」

 

39)生徒会🆚先生
今日は、半年に一度の生徒会役員総会の日。

生徒から上がった要望を先生と審議する大事な会だ。生徒会から4名、先生から4名、それと各部の部長が会議室に集まっている。
部屋の机はコの字型に並べられていて、中央には進行役のJ理事長が座り、右手には生徒会長のヨコ子、副会長のムラ子、2年会計くら子、一年書記のやす子が一列に座っている。
左手の先生の席はまだ揃っておらず、今は安田先生と丸山先生がニコニコ談笑しながら、後の二人の先生が来るのを待っていた。
各部活、委員会の部長達は裁判所の傍聴席の様に、後ろで椅子を並べて座っている。
「楽勝だわ」とムラ子が言った。「山田と、後はどうせおじいちゃん先生だもの。」

「そうね」とヨコ子は丸山先生をチラ見して言った。

「完全帰宅時間を今より一時間伸ばすことと、学校帰りに多少の寄り道を許してもらうこと」

「ねえ、校内恋愛を認めるって?」

「まあ、あれだけ署名が集まればね〜」
ガラっ、残りの2人の先生が入ってきた。
「遅れてすまんな」

横山先生と、村上先生!

 

40)生徒会ミーティング
横山先生と村上先生!?

聞いてないんですけど!?いつも来るの、若手2人、おじいちゃん先生2人じゃない?通称《山田》の2人がのほほんと座っているから、てっきり、、
クラ子は「すみません、五分でいいので、生徒会でミーティングしてもいいですか?」と理事長に聞いた。理事長が了承してくれたので、生徒会の4人は逃げる様に廊下に出た。
「どうする?どうする?」ムラ子がかなり動揺している。

「ムラ子先輩しっかりして下さい!」くら子が言った。「かなり手ごわい相手ですよ?ここで恋心出さないで下さい」

「え、だってだって横山先生の前でぇ、、」そして何故か戦意喪失しているヤス子とヨコ子にも言い放つ。「ここは、一致団結しないと勝てませんよ」

「分かってるケド」

「討論したくらいで女性を嫌いになる様な男なんてくだらないですよ。保険をかけた行動なんて、先輩らしくないです」

ムラ子は、その言葉に「そうね、戦う乙女は美しいんだぞって見せつけてやるんだからっ」「え?」ちょっと不安になるくら子でした。

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⑦壁ドンとパンパンだ


31)放課後の教室 くら子と錦戸先生
「先生、話って何ですか?」

くら子はイライラと聞いた。今日は顧問の渋谷先生がコーラス部に(多分)来る日(多分)。
ちょっとでも早く行きたいんだよね。
錦戸先生は

「まあ、座ってよ、相談があるんだ」

と言ったが、くら子は

「立ったままで大丈夫です」

と先生の話を待った。
錦戸「うん、まあ、先の話なんだけどね。3年生が引退したら、くら子ちゃんがコーラス部の部長だよね?」

「まだ《仮》ですが」
「実は、ここだけの話、来年のコーラス部は僕が顧問になる予定なんだ。それで、来年のコーラス部について、、」

「渋谷先生は?」

「え?」

「今顧問の渋谷先生はどうするんですか?」

「いや〜先生は今でも半分軽音の方を見てるやん?本当の顧問のおじいちゃん先生が、軽音ずっと辞めたがっていたから、」
「じゃあ、私も辞めます」くら子は言った。
「辞める?」

「渋谷先生じゃ無いなら、コーラスに居ても意味ないので」
ふうううう〜〜っと錦戸先生は長いため息を吐いた。すばる君かああ〜〜。

 

32)くら子と錦戸先生(とあと2名)
「でもさ」

錦戸先生は、少し目線を上げてくら子を見た。(僕の方が、まだ高い!)
「渋谷先生、くら子ちゃんよりもかなり、」
「ちっちゃいですよ!?」それがどうした、とばかりにくら子は言い放った。
「渋谷先生とどうこうなりたいなんて、これっぽっちも思っていません!」
くら子は叫びながら、錦戸先生の方に一歩、また一歩と進んでいった。

「迷惑をかけようなんて思っていません!」錦戸はどんどん後ろに追い詰められていく。
「毎日、顔を見て、声を聞いて、姿を追うだけで良いんです」今やくら子は涙声で、錦戸先生を壁にまで追い詰めた。
「一緒の空気を吸うだけで幸せなのっ!!」
ドンっ!!錦戸先生の顔の真横に拳を叩きつけたくら子。
おびえる錦戸先生に

「この事、渋谷先生に言ったら、私、絶対に許さないから」

 

「ヒョエ〜」どえらいもん見てしまった!!
入り口の扉の隙間から、出ている顔が2個。

 

33)丸山先生とヨコ子
丸山先生はビックりするような光景を見た。
ある教室の入り口で、はいつくばる様にして首だけを中に入れている女生徒。中からは女の子の怒鳴る様な声が聞こえる。
あれだ、変な体勢だけど、『盗み聞き』

 

ヨコ子は必死に聞き耳を立てていた。教室の中からくら子の声がしたので、ほんの少し開いている入り口から中を覗くと。
何と、くら子が錦戸先生に迫っているじゃない!!どういう事!?見つかったら最後、と思い、ズリズリ下に下がっていって今や地面すれすれまで来た。
急に上から「ヒョエ〜〜」と言う声がして、ばっと見上げると丸山先生が教室を覗いてる。

丸山先生は「しい〜☝️」と言って、ヨコ子以上に熱心に観察していが急に「やばっ」と言ってヨコ子を引っ張っていった。

ある程度走ってから「びっくりする事だらけやなあ〜」と丸山。「あの2人もびっくりやけど、まさかヨコ子ちゃんが這いつくばって盗み聞きとはね」

ヨコ子は頭がクラクラした。

 

34)丸山先生とヨコ子2
「私、あの、私っ」

とにかく色んな事がいっぺんに起きて、ヨコ子は頭も回らないし、うまく説明も出来ない。よりによって、丸山先生に見つかるなんて。恥ずかしくて、これからどうしたらいいのか?そして!くら子。どうなるの!?
「大丈夫って」と丸山先生は明るく言った。「僕も同罪。人に言いふらす趣味もない、でしょ?」
こくこく頷くヨコ子。
「くら子ちゃんが心配だったんでしょう?」
こくこく頷くヨコ子。
「ただ。りょーちゃんのあの姿、クフっ、どえらいもん見ちゃったよね」
クネっと笑って「あ、そうや!」丸山は急に思い出した様に言った。

「ヨコ子ちゃんって、錦子ちゃんと仲良かったよね。」
こくこく頷くヨコ子。
「授業中、何とかしてあの子笑かしたいねん、全ての一発ギャグ使い果たしても笑わんし。どう言う事で笑うん、錦子ちゃんは」
確かにいつもニコニコしているけど、大笑いしたのは、、確か、

「村上先生がツボだわ」

 

35)そのあとの職員室
錦戸が自分の席に座ると、2つ隣の席の丸山先生がほほえんで言った。

「お疲れ様です」
錦戸が「お疲れ様です」と答えても、まだほほえんでいる。??何か気持ち悪いな。
ただでさえ感情がコンヒューズなのに。
いや、真近で見るくら子は本当に綺麗やった。ぞくっと来たなあ。俺かて、先生って立場はわきまえてるよ、少なくても生徒の間は。ただ、、そうか〜すばる君かああ〜〜
んん、そういえば、あの時入り口で物音がしたんだよね。

もしかして!?バっと丸山の方を向き、

「丸山先生、もしかして、何か見た?」と聞いた。

丸山は、不自然なくらい、目の前の教材に集中して返事もしない。やっぱり!!
「オイッ、立てやゴォラー!!」

錦戸は丸山に向かっていった。丸山は明らかに動揺している。

「ちょっと何してんの!?」
2人の間の席の安田先生がオロオロして錦戸をなだめている。

「丸山、何か言え!!」

「だって怖いねんもん」

「やっぱお前か!」
「怖いっ!!」

「ここ、職員室やろがーー」
安田先生が一喝して騒動は収まった。

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⑥きちゅ!

26)クラ子とヤス子
そもそもクラ子は昔から友達が少なかった。

小さい頃から見た目が端正過ぎて 近寄りがたいオーラがあるし、本人も極度の人見知り。
心よりも外見が先に成長してしまったので、人が期待する自分と、本当の自分に悩んできた。

緊張で固まっていると『お嬢様だから自分から動かない』と言われ、話すきっかけを探していると『他人を見下して自分から話しもしない』なんて言われる。

近寄って来る人も私の外しか見ていない人達。

でも、私には幼馴染のやす子がいるし。ヤス子といると自分らしくいられるのよね。

学年が一つ下のヤス子はクラ子にとって、まさに「心のオアシス」だった。
そんなクラ子も高校になって、自分が小さい人間だった事に気がついた。

なんて個性的で堂々としている人がいるんだろう。1つ学年が上の、ムラ子達を知ってそう思った。それから、やす子が入学してきて、ヨコ子のファンになったことがきっかけで、あの7人で居るのが自然になった。
しかも、一年から一緒のクラスのマル子は私を特別視しない。居心地が良くて、ちょっと自信もついた。人からどう思われようと自分は自分。

だから、思い切って1人でコーラス部に入ったのよ、渋谷先生。

 

27)やす子

ヨコ子お姉様についての観察日記には、大倉先生についての記載もつけている。

『今日は、おひげの剃り残しあり💚』
あの、バーベキュー動画が出回ってから、最近特に人気が高いのは錦戸先生だけど、実は「大倉先生の『集中5億』見てたら落ちた」なんて言ってる女も多いのよね!?私なんか軽く35億回は見てるし。私は同担拒否じゃないけど、ミーハー拒否だからねっ。

ブツブツ言いながら歩いていると、忍者のようにしのび足で歩く女達発見。あれだ、横山先生の親衛隊だ。本当に鬱陶しい。きっと近くに『よこちょ』がいるんだ。
横山先生は意外と男らしいから、表立って行動すると嫌われるって分かっているんだ。だからあの人達、コソコソストーカーしてる。
「ちょっとそこのブス!!」ほら来た。

「又横山様に『よこちょ』なんて言ったらしいじゃん」

「ええ、『担任』ですから。先輩。」
「あんたね、ムラ子やヨコ子に取り入ってるからって偉そうじゃない?」

「取り入ってもいません、偉そうにもしていません、私は誰の力も借りません、あ、先生行っちゃいますよ?」

 

28)横山先生とやす子
「ドコドコ?」

親衛隊がしのび足でズリズリ去ってった。
「こっわ〜〜」
「でしょ〜〜よこちょ先生」
ひょいと影から出て来た横山先生はやす子をまじまじと見た。
「なんか悪かったな。かえってオレ出て行かん方が良いと思って。でも、なんかあったら助けようって、、、意外とお前強いなあ」
「強くないです。今だって足がガクガクしています」

「えっ、大丈夫か!?」

オロオロする横山先生を見ていると、親衛隊の気持ちも分からなくも無いなと思った。
「えっと、おっぶったりなんか、、」
「ふふっ、無理しなくて大丈夫ですから。」
「でも、お前」

「あ!お前って言った!」
「あれ、ごめん、なんでやろうな、やす子さんには言うてしまうわ、訳わからん」

横山の陶器の様な顔が真っ赤に染まっている。

「私は『誰にとっても気軽な人間』だからですよ、よこちょ先生」
「よこちょ言うから!ほいで、気軽なんかじゃ無いで。俺これでも緊張してるんや!!」

 

29)横山先生
訳わからん。なんであんな事言ったんかな。自分で驚いて、そのまま職員室に戻ってしまったけど。
そや、大倉に、放課後自分の教室見るように言われたんやった。うちの教室のお花をいけてるおばけを探せ??意味わからん。

大倉先生が「横山くうん、どうでした?おばけいました?」

興味無さそうに聞いて来た。
「イヤイヤ、教室のそばまで行ったんやけどな、知ってるか?あのしのび足で歩く集団!!ビックりしてな」
大倉先生は

「やっぱり、横山くんだけは気付いてなかった!!」と大笑いした。
ムキになった横山は

「なんか近くでズリズリよく音するなあ〜って知っていたし!!」
と言い返す。

すると職員室中が大爆笑!!
「ちょ、何なん!俺だけ仲間ハズレか!?」
「ちゃうやん、あんなん普通気づくやろ!」

渋谷先生が言うと

「ええ〜〜横山くんマジ知らんかったん?」と丸山先生までからかう。
「まあ、よこちょやから」と言う安田先生に「よこちょ言うなぁ〜」と横山は怒鳴った。

 

30)やす子 の担当
なんかドキドキした。
横山先生は、いつもポカンと口を開けてポヤポヤしているイメージがある。
でも実は真っ直ぐで熱い人。頭も切れる。
そして、いつも自分の事以外で一生懸命だから、自分の事がおろそかになる。
頭の中で色々考え過ぎているから、すぐ忘れ物をしちゃう。
そうだな〜顔は、端整。美麗。認めよう。
多分、自分で分かってないんだな。てか持て余している感じ。
からかうと、すぐムキになるし、話していて凄く楽しい。
さっきも、まあ、正直、可愛い、、というより、、男?
、、私にだけなんだ、「お前」って言うの。

それから、、と考え始めて「ダメダメ」と口に出した。
私の担当は大倉先生でしょ!
私は一途なの。
担降りは、しない。

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⑤バンド名はエイト

21)ヨコ子の部屋 2
「ひ、み、つ」ムラ子は指先をフリフリしながら、みんなの間をゆっくり歩いている。
「乙女なんだから、内緒にしておきたいこともあ、る、の」
「どうせ、横山先生関係でしょ、それより!」「うぎゃ〜〜な、何で知って、、」と叫ぶムラ子を制して、くら子が続けた。

「これがライブ情報よ」
急に静かになり、7人は一枚のチラシを凝視した。

「このエイトってバンド」「絶対そうだよね」「会場、結構大きい」「この日は連休だし」「チケット取れるよね」
「いける」7人は声を合わせて言った。
「問題は」とヨコ子。「学校にももちろん、先生達にも絶対にバレたらダメってこと」
「特にすば子!!」ビシっと指で指す。
「あなた、イカ持ち込み禁止。そして、その独特のオーラを消しなさいね」

「分かった」
「消せるんかい」

と年下達がずっこけてるのを見て、

「あなた達も極力地味でおとなしくてダサい格好するのよ、特にやす子!!」
「分かってますよ、ヨコ子お姉様。」

 

22)保健の授業 教室
村上先生はいらだっていた。保健の授業となるとみんなが一気に休憩モードになるからだ。
「先生!保健なんてやめてサッカーしようぜ」

「そんなの教科書読めばわかるじゃん」
確かに保健の授業はつまらない。特に今日の授業はやりにくい。いくら《鬼の村上》と言われていようが、授業を真剣に聞いている生徒はほぼいない、

そう、まる子を除いては。


授業後
「まる子、お前だけや、姿勢を正して真剣に聞いているやつは。今日の受精卵の話もよう聞いてくれた」
「ヤダ、先生、当たり前じゃないですか。授業はちゃんと受けるのは生徒の義務ですよ」
「その割には、成績上がらんなあ〜」
「んも〜先生ったら!」

村上先生は、「おれは何事も真剣なやつが好きやで」とかすれた声で言った。

マル子がドギマギしていると

「それって告白?」クラ子が笑いながら聞いてきた」

「好きか嫌いかって事」と村上先生。

「大人の男からかったら、後で痛い目あうで、ほな!」と手をひらひらさせて教室を出て行った。

「む、出来る男」とくら子は言った。

 

23)すば子
すば子が歩くとみんなが話をやめる。

あからさまにはしないが、みんながすば子を意識している。

あんな独特な美少女、他にいる?
あんなにスカートが短い女の子、他にいる?
すば子は小さい時から、ちょっぴり周りから浮いていたけど、ムラ子達6人と、あの若手の7人の先生達は普通に接してくれる。

村上先生がすば子に厳しいのは、みんなと打ち解けて欲しいからだ。大倉先生も横山先生も普通に話しかけてくるし渋谷先生は、何を考えているのかは分からないけど、嫌な感じはしない。丸山先生も、急にギャグを仕掛けて来て笑える。キショイ時あるけど。
安田先生とは、一番自然体で居られる。何も質問しないし、こっちが話したい時はただニコニコ聞いてくれる。調子が悪い時、誰も分からないのに先生だけは気付いてくれる。
そして、そして錦戸先生。
まさか、小さい時からの夢のあの人に出会えるなんて思っても見なかった。小さい時は光が強すぎて見えなかったけど、だんだん光の中から現れ出して、、そして一目見て分かった。

あの人だって。

「イカを食べなさい」

と勧めてくれた、あの人だって。

 

24)錦戸先生 横山先生 帰宅途中
「何やろう、最近女生徒がいやに絡んでくるねん。なんかさ、母親みたいにやたらベタベタお世話してくるし、影で『りょーちゃん先生』なんて呼ばれてんねんで。よかーまくうん、何とかしてっ」
「イヤイヤ、何とかって。たぶん俺らのバーベキューの映像が流出して、めっちゃ広まってるからやろ。それで錦戸さんの行動が母性本能くすぐったんやろう」
「めっちゃ恥ずい。なんかさ、メンバーの前やから甘えてんのに、あんなん他人に見られるなんて。俺、学校では真面目やのに」
「女子はみんな錦戸さんにデレデレすんねんな、可愛い💕って」
「くら子だけは、冷めた目で見てくる」
「ああ、あの、媚びは売らんけど妙な色気がある子な、確かに自立した男が好きそうやなぁ、背が高くて綺麗な子や」
「僕より高いねんで」

「そんなん知らんし。」

「やっぱ、女性は自分より背が高い方がいいんでしょうね」
「え、どっくんマジ!?」

 

25)くら子の部屋
くら子はヨレヨレになっているチラシ(のコピー)をまた広げた。そこに紹介されているバンドの写真。バンド名は『エイト』。メンバーの顔は光の陰影でうまく隠してある。

だけどね。ステージの中央で、真っ赤なマイクコードを命綱のようにぐるぐるに掴み、天にこぶしを突き上げているこの人。

「絶対、渋谷先生だ」写真の顔を撫でる。
このライブハウスはステージがちょっと高めだから、、、
私は彼を見上げるんだわ。
そして彼は私を見下すように、、、
「きゃ〜〜。。。やっば〜〜いい」

「あなたの方がやばい」
おっと、やす子がいたんだっけ。いいけど。
「そういう可愛い所をさ、学校でも、もっと出していけば?」
「別に良いの。私はクールキャラでいいの」
幼馴染のやす子の前では、本当の自分が出せる。他の5人の前でもかなり自然だけどね。

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④安田先生のウィンク

16)廊下 安田先生 まる子
泣いているムラ子と、「え、ちょ、待って」と叫んでいる大倉先生を残して教室を出た安田先生とまる子。

軽くまる子の腕を握って引っ張るようにして出てきた安田先生は

「あ、ごめんなあ」と、パッと手を離した。
まる子はドキドキしすぎて、何も答えられない。ただ、安田先生が掴んでいた腕が、ジンジンと熱くて、こわばって動かせない。
「いやあ、実は大倉、ああ見えて人の相談乗るのめっちゃ上手くてさ、そう、まる子ちゃんも何かあったら相談してもらいー」
「やっ」

「えっ?」

「安田先生にっ、相談したいですっ、何かあったら」

「おれはいつでもOKやで〜、あまり参考にならんかもやけど。そうや、食べかけやったけど、今日のお好み焼きも絶品やったわ」
「ほんとですか?、じゃ又持ってきます」
「おれは嬉しいけど、そろそろ本命にあげてもいい頃やで」

そう言って、安田先生は
バチン☆とウィンクして、歩いて行った。
(あんたや〜〜本命はあんたや〜〜)

ウィンクに被弾して、膝から崩れ落ちるまる子なの。

 

17)会議室
「ごめ〜〜ん、遅なって」

会議室に入ると、他のメンバーは勢揃いしていた。
「遅いぞ、大久保」「オークラ!」「小倉〜」「わからへん!」
って一応のがやを経て、次のライブについての真剣なミーティングが始まった。
この、ONとOFF、集中力の使い分けがおれらの強みやな、と年長者の横山先生は思う。
この7人の超個性的なメンツで活動しているけど、一つの目標に向かって団結する力がピカ一やねんな。それにしても、今日の大倉はいつも以上に上機嫌やなあ。
「なあ〜横山くん」
一通りのミーティングが終わって、それぞれ自由にだべっていると、大倉が話しかけてきた。

「今日ってなんか事件的なものあった?」

「なんやねん、事件的な物って」

「いやあ、例えば、生徒に告白されたとかさ」
「アホなこと言うな、俺先生やぞ」

ムキになる横山先生を見て、なるほどね、親衛隊の存在も知らないわけだ。そして、きっとムラ子の気持ちも、と大倉先生は思った。

 

18)会議室2
「よこちょはさ、」
いきなり安田先生の声が真横から聞こえて、横山先生はビクっとした。
「お、お前、いつからそこにいるねん」
「なんかさ、今日びっくりした事とか無いん」
「よこちょって言うな、ほんまお前たちは。」「お前たち?」
「ええねん、それより、今日初めて噂のムラ子に会ったくらいかなあ。なんや凄い勢いでスキップしてて、まさかうちの教室に入ってくるとは思わんやん、立ち止まって見てたらいきなりぶつかって来てん。」
「今日初めて会った?」大倉先生が尋ねた。
「いや、もちろん女子バスケ部の応援行った時とかは見てたで。でもちゃんと見たんは初めてやってん。なんかさ、いきなりぶつかって、いきなり自己紹介始めて、いきなりキャ〜〜言うて、いきなり走り去って行ったわ。」
何やったんや、と困惑し考えている横山先生。大倉先生はムラ子の涙の意味が大体分かった。

 

19)安田先生、大倉先生帰り道
「ムラ子は今まで、遠くからひっそり想っていたんや、」と大倉先生。
「鈍感横山先生は全くは気付いて無かった。それで、初めてのちゃんとした出会いがこれか。ドジっ子ムラ子ちゃん、やなあ。」
「幸せに、なってほしいねん、ムラ子には」
「オークラどうしてん、本気なんか」
「本気とかそう言うのどうでもいいねん、ただ、ムラ子の一途さが、なんやろ、凄い心に刺さるねん。」大倉先生が答えた。
安田先生「まあ、一生懸命やな、何事も。自分には全く関係ない教室を綺麗にしたり。こないだ学校の七不思議に認定されとったわ、あの教室だけいつの間にか花いけられてるって」
「ほいで、当の横山先生には全く伝わって無いねんで!?」

「まあ〜〜よこちょはなあ〜、、でもな」
安田先生はまっすぐ大倉先生を見ていった。
「オークラだって幸せになっていいねんで」
何も言い返さず大倉先生はただ、今日のムラ子との時間を思い出して、ほんの少し幸せになった。《でもほんとはあかんねんで。》

 

20)学校が終わって ヨコ子の部屋 7人
「何よ〜学校で言えない事って?」

ヨコ子が怪訝そうにくら子に聞いた。
「私、情報ゲットしたわ」

「出た!くら子の情報収集力!!」

「もう、真面目な話なの、ついにしっぽをつかんだわ。」
「もしかして!?」みんな色めき立つ。
「そう、秘密にしているつもりの先生達のバンド、今度のライブ情報ゲットよ」
「アッ!!」「何よ、ムラ子」

「普通さ、同僚のこと、メンバーって言う?」「え、言わないよね〜」

「それがさ、大倉先生が『職員会議でメンバーが』って言ったのよね、そのあとヤバって感じで言い直してたけど」
「どこで?」やす子が何げなく聞いた。

「どこで、そんな会話したの〜」

「あ、あの時でしょ!」まる子が大声で言う。やす子は今度はまる子をみて「あの時って?」あくまでも、さりげなく言う。
「ムラ子先輩、大倉先生に相談乗って貰ったんだよ〜、そう言えば何で泣いていたの?」

えええ〜ムラ子が泣いた!と大騒ぎになるみんなの中で、やす子だけはしかめっ面。

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③横山先生 ミーツ ムラ子

11)3年 ヨコ子のクラス 昼休み

なぜかこの、3年のヨコ子のクラスに、何かと7人が集まって来る。7人が生徒会役員という事もあるけど。やすこと錦子は一年生、まる子とくら子は2年生、すば子とムラ子、ヨコ子は3年生。それぞれ幼馴染や親友などの関係があって、この7人で行動する事が多い。
「ねえ、私達、いつアイドルデビュー出来るのかしら?」
「何言ってんのムラ子。そんなの無理に決まってるでしょ!」
「ええ〜私たちなら出来るって!!」
「学校が廃校になるならね」
「!!!!!」
「バカねえ、学校法人ジャニ学院の附属高校が潰れるわけないでしょ。」


周りの生徒は、学年も部活も違うこのグループの、独特のオーラに何も口を出す人はいない、あの先生達以外は。
あの先生達とは、この高校の「若手」7人。私立高校なので異動が無く、おじいちゃんが多い先生達の中では若手だ。

仲もいいし、皆顔のレベルも高い。他校生が集まる文化祭では、先生目当ての他高生が溢れるほどにやってくる。

 

12)入れ替わ、らない

ある日の放課後。部活前にムラ子が妄想しながらスキップをしていると、バンッ!!と人にぶつかった。
「よ、よ、横山しぇんしぇい!!」
鼻を押さえながらムラ子はドギマギした。
「あなた、鼻大丈夫??」横山先生はびっくりして慌てている。
「うぐぐっつ、あなた、じゃあありません」
ムラ子はアイドルの挨拶のようにスッと手をあげ
「はいっ、3年C組 ムラ子ですっ。好きな食べ物は焼肉、好きな動物は猫、好きな人は、、、人は、、それは、、きゃあ〜〜」
と一気にまくし立てて、走り去って行った。
ポカンと口を開けたままムラ子を見ていた横山先生。
ああ、あの噂のドジっ子ムラ子ちゃんかあ。女子バスケ部で歴代トップの得点を入れた。
試合ではいつもぶっといハチマキしてて、よお顔が分からんかったけど。
おもろい子やなあ。
そやけど、ここ1年生の教室棟だけど、3年生がなんか用あるんか?

 

13)美術準備室 安田先生 まる子
マル子はムラ子にイライラと言い放った。

「先輩〜〜ここはお悩み相談室じゃないですよ?」
「わーん、やしゅだ先生、まる子が意地悪言う〜〜」
泣きじゃくるムラ子は手が付けれない。安田先生のいる美術準備室に、崩れるようになだれ込んで来てから、ずっと泣いている。

安田先生とのまったりとしたお茶を楽しんでいたマル子は、ちょっぴり辛辣になっていた。久しぶりに、すば子ちゃんもいない2人きりの世界だったのに。
更にそこにもう一人。
「ヤスいる〜〜」
って大倉先生が入って来たのだ。泣きじゃくるムラ子をぼうぜんと眺めている。
泣いている理由も聞かず、優しくムラ子の背中をポンポンしていた安田先生はホッとして、
「オークラ、ちょうど良かったわー。おれ職員会議の準備があってさ、まる子ちゃんも手伝ってくれるんだよね、さあ行きましょう」
「え〜何で?そうやっけ?でも、ヤダ、なんか嬉しいけど〜」
とか何とか言って2人は出て行ってしまった。
ちょっと待て。オレどうしたらいいの!?

大倉先生は呆然と泣いているムラ子を見た。

 

14)泣いているムラ子の心

せっかくの横山先生とのファーストコンタクト、大失敗しちゃった。印象最悪よ。もう、ムラ子のバカバカ。横山先生に「教室をいつも綺麗にしてくれていたのは、君だったのか」なんて言われて、「どうして3年生の君が?」なんて言われて「君だったんだね、ずっと探していたんだよ」なんて、ウキウキ妄想中に、よりによって横山先生と正面衝突するなんて。しかも毎晩練習しているアイドルコールまで中途半端に出しちゃって。

あ、ああ〜部活行かなきゃな〜〜

でも何だか疲れて動きたくないなあ。ん、誰かが頭を撫でてくれている。安田先生かしら!?うううん?夢を見ているのかな、気持ちいい。

 

泣き疲れて机に突っ伏して寝ているムラ子の頭を撫でながら、大倉先生も泣きたくなっていた。でもそれは、悲しさとかでは無く、何と言うか、愛おしさ?

そういえば最近では、女性を信じられなった原因の、数年前の失恋の痛みを感じなくなっている。
いつも明るくて、超ポジティブで、みんなの先頭に立っているムラ子ちゃんは今、きっと横山先生の事で泣いている。

なんて可愛い。

 

15)メンバーって何の?

約30分後、いきなりガバっと顔を上げたムラ子。「あれっ?大倉先生?安田先生は?」

机の向こう側で、何故かニッコリしている大倉先生がいた。
「安田先生は職員会議の当番やったから」
「え、ごめんなさい。迷惑かけちゃった?」
「全然。おれもゆっくり出来たから。」
「職員会議でしょう?遅れちゃいますよ」
「大丈夫、今日はメンバーだけやし」
「メンバー。メンバー、って言いましたよね?言いかた、なんか気になります」
「え。えっと〜職員の若手のメンバーって言う意味だよ、ほら、部活行ったら?」
「私の目は誤魔化されませんからね。」
そういやムラ子、頭も切れる文武両道だっけ
「今日は勘弁してあげます。でもいつか、噂の真相を確かめますよ。」
やっば。バンド活動がバレたらどうしよう。
「それより、悩み事は大丈夫?」
「ええ、ちょっと寝たらスッキリしました。作戦変更です。ありがとうございました。」
そう言って一礼すると、にっこり微笑んで出て行っちゃった。
やっば。何あいつ。ほんまにいい女。

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