⑧野鳥の会のまる子
36)くら子
(いつも冷静な私が、感情をぶちまけてしまった)
くら子も又、感情がグチャグチャだった。
(しかも、錦戸先生に。私が壁に押しやった時、仔犬の様におびえていたわ。でもね、身長のことを持ち出すのはNGでしょう!?)
渋谷先生と両想いなんてありえないのは分かっている。
「絶対」くら子は声に出した。「叶わない。」
今からどんな奇跡が起ころうと、私の身長は縮まないし、ましてや渋谷先生が成長する事も無い、いや、待てよ。
「あの人、時々5歳児じゃない?」ふふふっ。
いや、あの人、疲れると、初老になる時もある。ふふ。
ああ〜今多分顔がブスだから会いたくない、けど、どうしても足はコーラス部に向かう。
カラカラと扉を開けると、いたわ。彼が。
「錦戸先生とミーティングは終わったんか?」と渋谷先生が聞いてきた。
「えええ〜りょうちゃん先生とぉ!?何話してたの!」と数名の部員が色めき立った。
そうか、そう言えば相談って言ってたなあ。本当にごめんなさい、錦戸先生。心で謝りつつ、渋谷先生の姿を直視する。
はあぁ〜「ちっちゃ」
37)次の日 2年 教室
今日もマル子が双眼鏡で安田先生をのぞいている。「ちょっと、」クラ子が声をかけると「今、忙しいんだから、待っててクラ子」
この窓からはちょうど隣の専門科棟の美術室が良く見える。はっきり言って、裸眼でもそれなりに見える距離だ。
「いやん。今日のお肌、荒れているわ。あ、又あの一年が近づいて!!ヤスくん逃げて〜!
「あのさ」
「あーん、行っちゃった。何?くら子」
「、、安田先生ってさ、」
「可愛いよね〜💕」
「いやいや、確かに可愛いけどさ、あんたより、その、小さいじゃん?」
「そこが又可愛いのね〜💕」
「気にならない?」
「何で?」
「だって」マル子は珍しく、マジトーンで言った。「それはヤスくんの個性だし、身長を好きになった訳じゃないし、私は全然気にしない」と言ってから、「きゃっ好きって言っちゃった?💕」と一人で照れている。
「、、ふん、ブスのくせに」
「ブスって何よ〜〜きいい〜」
「きしょい、寄らないで」と言いつつ、クラ子はマル子と離れない。気持ちが前向きになった、ありがとう。
38)村上主任とほほえみ
会議室で、村上主任から長いお説教を受けているのは丸山先生と錦戸先生。二人ともシュンとして村上の話を聞いている。
「それで、そもそもの原因は何やねん」
二人とも黙ってうなだれている。
「言えん事か?」
「はい、どうしても言えない事です」
村上主任の目を真っ直ぐ見て錦戸先生は言った。
ため息をつきながら
「そうか、わかった。今後は場所を考えろ、いいな」村上主任は、組んでいたスラリと長い脚をほどき、部屋を出て行こうとした。
「あっ待って、信ちゃん!!」と丸山。
「アホバカボケカス」とぽこぽこ丸山を叩きながら「学校で信ちゃんは無いっ」と村上。
「聞きたいことがあるねん」と丸山。
錦戸は丸山の肩をポンと叩いてから「失礼しました」と行って出て行った。
「錦子ちゃんってさあ〜」
「サッカー部のマネージャーの?」
「そうそう、一年のお澄ましさん」「お澄まし?えっ、あの子ようケラケラ笑うけどな」「よう笑う⁉️」
「あの、サッカー部の合宿の時なんか、」「サッカー部の、がっ合宿⁉️」
「何やねん、お前」
39)生徒会🆚先生
今日は、半年に一度の生徒会役員総会の日。
生徒から上がった要望を先生と審議する大事な会だ。生徒会から4名、先生から4名、それと各部の部長が会議室に集まっている。
部屋の机はコの字型に並べられていて、中央には進行役のJ理事長が座り、右手には生徒会長のヨコ子、副会長のムラ子、2年会計くら子、一年書記のやす子が一列に座っている。
左手の先生の席はまだ揃っておらず、今は安田先生と丸山先生がニコニコ談笑しながら、後の二人の先生が来るのを待っていた。
各部活、委員会の部長達は裁判所の傍聴席の様に、後ろで椅子を並べて座っている。
「楽勝だわ」とムラ子が言った。「山田と、後はどうせおじいちゃん先生だもの。」
「そうね」とヨコ子は丸山先生をチラ見して言った。
「完全帰宅時間を今より一時間伸ばすことと、学校帰りに多少の寄り道を許してもらうこと」
「ねえ、校内恋愛を認めるって?」
「まあ、あれだけ署名が集まればね〜」
ガラっ、残りの2人の先生が入ってきた。
「遅れてすまんな」
横山先生と、村上先生!
40)生徒会ミーティング
横山先生と村上先生!?
聞いてないんですけど!?いつも来るの、若手2人、おじいちゃん先生2人じゃない?通称《山田》の2人がのほほんと座っているから、てっきり、、
クラ子は「すみません、五分でいいので、生徒会でミーティングしてもいいですか?」と理事長に聞いた。理事長が了承してくれたので、生徒会の4人は逃げる様に廊下に出た。
「どうする?どうする?」ムラ子がかなり動揺している。
「ムラ子先輩しっかりして下さい!」くら子が言った。「かなり手ごわい相手ですよ?ここで恋心出さないで下さい」
「え、だってだって横山先生の前でぇ、、」そして何故か戦意喪失しているヤス子とヨコ子にも言い放つ。「ここは、一致団結しないと勝てませんよ」
「分かってるケド」
「討論したくらいで女性を嫌いになる様な男なんてくだらないですよ。保険をかけた行動なんて、先輩らしくないです」
ムラ子は、その言葉に「そうね、戦う乙女は美しいんだぞって見せつけてやるんだからっ」「え?」ちょっと不安になるくら子でした。