⑨試合の行方とありえへん山田
41)議題「完全帰宅時間を一時間遅くする」
傍聴席にいる各部長達は、まるでテニスの試合を見ているようだと思った。
「だから、遠方から通う生徒もいる訳で!」
「遠い人は先に帰ればいいんです」
「部活動によっては、ちょっとした練習が凄い差になるし、後片付けは残りの子がするんやで、」
「そういう細かい事は、各部で決めれば良いじゃないですか?小学生じゃないんですよ」
「それだけじゃ無くて、この高校は繁華街に近いからちょっとでも危険を避けたいのもある」
各部長は右、左、右、左と首を動かし、試合の行方、いや、討論の行方を追っている。
発言が途切れる事はない。ほとんどの発言は横山先生と村上先生🆚ヨコ子とムラ子だ。
たまに話題がそれると、くら子が軌道修正する。
ヨコ子は各部にアンケートを実施し、細かい聴き取りなどして膨大な資料を準備していた。ムラ子が言葉巧みに口撃すると、村上先生が切り返してくる。ヨコ子がそっとムラ子に耳打ちすると、ムラ子が新たに仕掛けてくる。たまに横山先生もボソっと核心を突いた事を言うので油断が出来ない。
議事録を取るやす子は「盾と矛」とつぶやいた。
42)Jとムラ子
観客達、いや各部長達は、どちらの応援も出来ずに首だけを左右に振っている。
そもそも、生徒会からの議題は自分達が出した要望なのだ。しかし出席した先生達はみんな人気が高く、生徒会の応援もやりにくい。
とにかく、村上先生&横山先生🆚ムラ子&ヨコ子の熱いバトルは終わりを見せない、、、
かと誰もが思ったその時、オヤジキラーの異名を持つムラ子が作戦を変えた。
「J理事長センセはどう思われますぅ?」
いきなり進行役のJ理事長に話を振ったのだ。
実はムラ子とJ理事長は仲がいい。
全員が息を飲んで見守る中、
「私ですか」
J理事長は、ニコニコしながら言った。
「私は学園の運営に関しては一切口を出さないと決めているんだよ」
「客観的な意見が欲しいだけなんです♡」
とムラ子。
「例えばなんだけど」
J理事長は、ゆっくり言った。
「もう少し頑張りたい部は、個別に申請を出す様にしたらどうかな?付近の商業店舗には、商工会議所や自治体を通して、私の方から気をつけるよう話を通しておくが」
「わあ〜さすがJね」と言うムラ子。
Jは「あなたも、ご活躍で」と笑った。
43)大山田
ところで、山田の2人は呑気なものだ。
出されたお茶🍵をすすって
「これA高級品か、B安物か?」
「うーん、A!」
なんてゲームをしている(もちろん、村上先生からは死角になっている)
「私は何を見せられているの?」
とクラ子は思った。熱い闘いが繰り広げられている横で、目の前ではキャッキャと漫才をしてる。
あの2人の周りだけ、時空が歪んでいる。
理事長センセからの『間を取る』案は、特に素晴らしいものでは無い。でも前しか見えないあの4人には考えもしなかった様で、一応の納得はしていた。
「あと2つも議題があるんだけどなあ、ああ部活行きたい」
と、クラ子が横目で👀やす子を見ると、ノールックで議事録を取りつつ目線は横山先生の方を向いている。?確か担任よね、やす子の。
「あなた、大倉担じゃなかったっけ?」
「そう、大倉先生のファンよ」
「やけに横山先生を見てるから」
「!よこちょは担任で。いつもポヤポヤしてて。あの、真面目な討論もするんだなあって思って」
ドキドキしながら答えた。
44)総会終了
後の議題は、予想外に早く決着がついた。
寄り道に関しても、学校に申請するならある程度OK。
しかし何故か、校内恋愛禁止に関してはJがかたくなに否定した。
「もちろん、禁止なんてしていないんだよ。ただね?学校は勉学が一番だろう。身も心も、ああこの人同士ならって認められると了解が出るんだ。」
「よく意味がわからないんですけど?だいたい誰が了解を出すのですか?」
「うちの姉。」
巨大学校法人J学園大株主のM女史だ。
ああ。
これで議論は打ち切り。会は閉幕した。
会議の後、村上先生がヨコ子達にズンズン近ずいて来た。何か言われる!?怒られる?、生徒会の4人が身構えていると
「イエ〜イ」
と両手を上げてハイタッチを求めてきた!
「いい闘いやったな!ノーサイドや。健闘を讃えようぜ」
ムラ子はキャッ〜とはしゃぎながら村上先生とハイタッチをすると👀
「横山先生もっ」と勇気を振り絞って言った。
横山先生は「おっしゃ!」
と言いながら喜んでハイタッチをしてくれた♡キャッ、この手もう洗わないんだ〜。
45)きちゅのハイタッチ
ムラ子が先生夫婦⇦?とハイタッチをすると、何故か(何もしていなかった)山田の2人まで横に並び始め、先生と生徒会役員がみんな順番にハイタッチをする流れになった。
丸山先生は「イエ〜イイ、ブンブンブン!」
と言いながらヨコ子とハイタッチをして
「えらい活躍やったなあ、惚れてまうやろ〜」とギャグ?を言う。ヨコ子はどう反応するのが正解なのか考えていると
「やっば、先生会議で何にもしていないのに〜あっははは」
とクラ子がお腹を抱えて笑っていた。そういえば、あの子意外とゲラだったわね。びっくりだけど。そして丸山先生も満足そうにしている。これが正解なのね!?レベルが高いわ。
やす子と横山先生は、軽く小さくハイタッチした。
「ちゃんと議事録取れた?」
「バトルの所は聞き取れなくて。だから録音したのを書き起こします」
「え、あの討論もっかい聞かれんの?何か恥ずいわ」
と横山先生は微笑んだ。
(私は大倉担)やす子は呪文を唱えた。